しゅみの部屋

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『ガンバレ!中村くん!!』とミソジニー的BLヘイトについて

まさか第二段をやることになるとは思っていなかったのですが、『ガンバレ!中村くん!!』及び原作者の春泥先生への不可解なほどの集中攻撃が、最初は国外からだったのが、(参照→

『ガンバレ!中村くん!!』とオリエンタリズム的BLヘイトについて)その後、国内の別の層からの集中攻撃に変わっていった流れがあり、自分も少なからず流れ弾をくらうようなことがあったので、その辺もまとめておこうかと思いました。

先に言っておくと、この記事はそういった攻撃の声への反論は目的としていません。

そもそも起こっている現実への見方が違いすぎて論戦しても平行線にしかならず、意味がないと思っています。

ただ、一連のことでの春泥先生の精神的なダメージをとても心配しています。

そして、私自身としては攻撃者たちに一定の傾向を見つけたので、その指摘が、もしどこかで巡り巡って、春泥先生が「気にしなくてもいいんだ」と思える一助になったらいいな、と思って書きます。

 

春泥先生の伝言

HERO'S Webアカウントから「春泥先生からご伝言」という形で掲載された文章は以下のようなものだった。

「TVアニメーション『ガンバレ!中村くん!!』第5話にて、教師と生徒が個人的に連絡先を交換する演出がなされておりますが、
あくまでBLとしての匂わせ表現以上の意味は持たず、作者やアニメ制作陣は、教師と生徒が個人的に連絡先を交換することを推奨しておりません。 
『乙切と広瀬の距離を近づけすぎず、あくまで教師と生徒の関係であることを意識して描写してほしいこと、 
女子生徒や女性キャラを性的搾取するような描写を避けてほしいこと、 
原作にある下品な描写はアニメではなるべく描かず、誰でも見れる表現に修正してほしいこと』などをお願いしたのは作者です。 
そして、その想いを守ってくださったのは制作チームの皆さんです。 
また、作者は過去に、BLというジャンルにおいて、年齢差の開いたカップリングや教員と生徒といった大人と未成年のカップリング作品をいくつか作ってきましたが、 
昨今の大人の未成年に対する凄惨な犯罪の多さを鑑み、今後はそれを題材にすることはありません。 
何とぞご了承賜れますようお願いいたします。 
そして、既に原作をお読みになり、ご不快になられた方がいらっしゃいましたら、誠に申し訳ありませんでした。」

すると、今度はこれに対して、「女子生徒や女性キャラの性的搾取はダメで、BLで男性が性的搾取されるのは良いということか」という声が集まった。

正直「そうは読めんだろ」と思うのだけれど、「そうとしか読めない」とさえ断言しているコメントもあって驚く。

そもそも、最初にあった国外からの批判は、男性教師から男子生徒への性的搾取的な雰囲気が原作にあるのではないか(いやないけど)というものであり、「あくまで教師と生徒の関係であることを意識して描写してほしい」「原作にある下品な描写はアニメではなるべく描かず、誰でも見れる表現に修正してほしい」という部分は、すべて男性への性的搾取描写に関する批判へのアンサーと取れる。

その合間に「女子生徒や女性キャラを性的搾取するような描写を避けてほしい」という一文が入っているのは、おそらくアニメ化打ち合わせなどの際に交わされたやりとりが順不同で出てきているような感じで、その辺は編集部がもっと仕事してほしかったところではあるが、作品そのものと事のあらましを知っていれば普通はしないような読解で、新たな批判と誹謗中傷が展開されていったのである。

その様子があまりにもひどかったので、私はこんなツイートを投稿した。

すると、この投稿にもおそらく春泥先生自身に寄せられたのと同じような内容であろう批判のメンションが多くついた。

最初は単に放置して収まるのを待とうと思っていたけれど、見ているうちに、気になるいくつかの傾向が見えてきた。

 

なぜか「赤いきつね」

メンションの中でかなり多かったのが、「赤いきつねと緑のたぬき」のCMを引き合いに出すもので、最初は本当に、なぜ急にその話題が出てきたのかわからなかった。

ここで言われている「赤いきつねのCM」というのは、2025年2月に公開されたCMのジェンダー表現が物議をかもした件なのだが、この件と今回の件が比較されるものとは思いもしなかった。

興味深いのは、あの件では「叩いてた側」「燃やした側」とこちらの立場を断定する声が多かったことだ。

正直、自分自身その時どんな発言をしたかも覚えておらず、試しに自分のBioから検索しても何もヒットしなかった。ましてや春泥先生があの件にどういう意見を持っていたのかなんてまったく知らない。

この件を持ち出した人たちの考えでは、表現規制や表現の自由の問題として「中村くん」への批判と、このCMがつながったようだけれど、そもそも私は「中村くん」の件を表現規制の話だとは思っていなかった。

そして「赤いきつね」の件でもメーカーは何のコメントも出していないし、CMも取り下げておらず、表現規制は起こっていない。

実際のところ、「批判」は「表現規制」ではない。どんな作品や表現でも、好きと思う人がいれば嫌いと思う人もいて、それぞれに感想を言う自由がある。それも表現の自由である。

ただ、作品に対して「それは差別表現だ」と批判する自由もあれば、批判に対して「それは差別的観点からの批判だ」と批判する自由もある。

それは一つ一つの作品に個別に行われることであって、この作品にこの感想を言うなら、他の作品にも言っていなければおかしいなんて理屈はありえない。

 

「女オタク」「腐女子」を個別の人間として認識できない

さらに違和感を持ったのは、別件で他の表現を批判した「女性と思われる人たち」と「私」が、まったく同一の意見と経験を有しているかのように話されることだった。

別件で批判した人たちだって、同じ団体に所属しているわけではないし、社会で起こる様々な出来事にみんなそれぞれ個別の意見を持ち、それぞれの人生を生きている個人である。

それが彼らの世界観では、一つの組織、一つの頭脳のように捉えられている。

まじそれ私に言われても、誰の話やねんと思う。

しかしこの認識で絡んでくる人が多くいることに、恐怖感も覚える。「女に恨みがあるから」と通りすがりの女性に危害を加えるようなフェミサイドが頭をよぎるからだ。

フェミサイドに限らず、被差別・マイノリティ属性の人々は特に、個別の人間であると認識されず、意見も行動もすべて同一の集団のように捉えられることが多い。そして多くの場合、被差別・マイノリティ集団は加害集団と認識される。

これは黒人差別でも、在日外国人差別でも、トランスジェンダー差別でも起こってきたことだ。

 

批判の矛先を「男オタク」に向けさせたというストーリー

ここが本当に、なかなか理解にたどり着くまで時間がかかった。

この辺を読んだ時点では、何のことを言っているのか本当にさっぱりわからなかったのだけれど、同じ理屈で語る引用ツイートをいくつか読んでいるうちに、彼らの中に一定のストーリーが共有されていることがわかってきた。

つまり、「伝言」として掲載された春泥先生の声明の中で「女子生徒や女性キャラを性的搾取するような描写を避けてほしい」という一文を入れたことが、「女性への性的搾取だと批判されている他のジャンルの作品への攻撃」とみなされたようだ。

おそらくここで「他ジャンル」とか「特定ジャンル」として言われているのは、いわゆる「男性向け」とされるジャンルのことなのだろうけれど、まじでその話全然してないので意味わからなかった。他者の意識がずっと自分たちに向けられていると思っているんだろうか。すごいな。君らのこと全然見てないよ。

だけど、一定数の人たちがこの同じストーリーを、当たり前のように前提として話しているのは、なかなか異様な光景だ。

同様の自意識過剰さがある種の人々の中に共通してあるのか、誰かが言い出したストーリーに乗っかっているうちに本気でそれを信じ始めたのかは定かではない。

ただ、前述したとおり、黒人差別でも、在日外国人差別でも、トランスジェンダー差別でも起こってきたように、被差別・マイノリティ集団は加害集団と認識されやすい。

前回記事では西洋からのアジアのクィアコンテンツに対する見下しとしての「BL差別」があると論じたけれど、ここで見えてきたのは、日本国内での「女性オタク」「BLファンの女性」に対する差別である。そして差別意識は、対象を個別の人間ではなく加害集団と捉えるがゆえに、自分たちに攻撃しているという空想を肥大させる。

それが春泥先生の「女子生徒や女性キャラを性的搾取するような描写を避けてほしい」という、自身の作品のアニメ化の文脈でまったく真っ当なことしか言っていないたった一文を、「自分たちへの攻撃」と捉えるような異常な認識を生み出したのだと思う。

 

 

ていうかこの記事書いてる間、ほんとは早くLoveUponATimeとLoveOfSilomの最新話見たかった~

ミソジニーオタク相手するよりタイBL見た方が絶対いい時間の使い方!!

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