しゅみの部屋

suki na koto no hanashi bakkari

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ViceVersaタイトルカラー考察EP10~12

癒しのミステリータイBL『Vice Versa』、BSテレ朝の放送は無事終了!

TELASA、YouTubeでは引き続き全話配信中です。

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YouTubeからはこちら(Nekocap日本語字幕あり)

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リアタイ当時Privetterに書いていた各話タイトルに冠された「色」の意味についての考察を、ここに加筆・修正しつつ再掲載していきます。

 

EP10. PINK

ここに来てド直球のPINKです。
ひえー
これまでにもSOFT BLUSHやDEEP MAGENTAというピンクカラーが2人の恋の展開を表してきたことを考えると、PINK=恋というイメージはほぼ間違いないでしょう。
互いへの気持ちを認め合い、一緒に生きていこうと決めた2人の背景や衣服にはたくさんのピンクが溢れている。

しかし…気になるのは、画面にいまだグレーが妙に多いこと。

たとえばあの“NumNum”シーンでも、2人で並んで歯磨きするシーンでも…。
まだ互いの姿が見えていないからだろうか?と思ったけれど、しかし帽子の件を考えると、この時はすでに2人とも互いの本当の姿がわかっていたはず…。

そしてその後の、PuenがPakornの父母と話すシーン。(ここ本当に泣いてしまう)

泣くPuenを父と母が両側から挟んで肩を抱いている。人物の服、ベッド、柱などにはグレーが目立ち、壁紙のピンクベージュも目に付く。

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グレーなんだけれど、なんだか温かくて透明感のある、美しいシーンなんですよね…

壁紙の温かみのあるピンクベージュも印象的に心に残ります。

 

EP11. REAL RED

そして…REAL RED。
実際のところ、このEP11中、赤色はほとんど登場しない。
じゃあ一体Real Redとは何なんだ!?と探していましたが、やはり答えは「PINK」の中にあったかも。
SOFT BLUSHが一緒にいるだけで幸福感を得られるプラトニックな愛、DEEP MGENTAがちょっと暴走気味な、誰かへの想いで心がいっぱいになってしまうような夢中な恋なら…
REAL REDは、とうとうリアルな互いの肉体に触れ合ったPuenとTalayの欲望の赤なのでは…

ひえー

しかしこのEP11、タイトルカラーの赤がほとんど出てこない代わりによく目に映ったのはホワイトベージュだったんですよね。
やっぱりこの色が、Talayと出会ってモノトーンではなくなったPuenの人生の新しいカラーなんだろうか。
それにしては、Talay1人のシーンにも頻出するこの色。もしかして、Talayも恋に絶望し孤独を選ぼうとしていたブルーな心が変化して、Puenとおなじホワイトベージュが新たなTalayの色になっているのだろうか…?
さらにホワイトベージュが気になるもう一つの理由は、Talayの見た夢。砂浜のベージュカラーが妙に印象的ではなかったか…?

さらに、グレーカラーもやはりまだ画面に目立つ。それは元の世界でやっと再会できた2人がベッドルームで語り合うシーンでも。

すでに元の世界に戻り、本来の姿のままで向き合っているはずなのに、このグレーは一体…?

 

EP12. CRYSTAL CLEAR

EP10やEP11でも、なぜグレーとベージュが多いのか…その疑問が解けました。

これらはグレーやベージュではなく、“CLEAR”の表現だったのでは?と…
そう思って見返すと、グレーやベージュに見えていたシーンの、なんと透明感に溢れ美しいことか…。
PuenとTalayの心が愛に満たされ、透き通っている様子まで伝わってくるよう。

思えばエンディング映像もグレーとベージュのCRYSTAL CLEARカラーだったわけですね。そしてそれは、EP9に出てくる「秘密の島」の風景の色でもある。

PuenがTalayを負ぶって海の浅瀬を渡る遠景。ベージュの砂浜を透明の浅い水面が多い、グレーがかった色合いになっている。空は少し曇った淡い水色。

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その色は、Puenの白に少し色が付き、Talayのブルーが少し薄まり、互いの色に近づいたようにも見える。

さらにCLEARといえば、やはり思い浮かぶのは、異世界のこと。

透明な紙をはじめ、建物などにも、異世界には透明のものが多い…と思っていたのですが。

元の世界に帰ってきてみたら、異世界と同じガラス張りの店があり、屋上にはFrendCreditsのスタジオと同じビニールハウスもある。Talayの持っているバッグは透明のビニールバッグだし、あのカフェのガラス温室もあった。

Talayのメガネも、Talay自身の透明感と合わさってCRYSTAL CLEARに輝いて見えましたね…。

私たちの世界にも本当は、CRYSTAL CLEARが溢れていたのかもしれない。以前はそれに気付けなかっただけで。

ゲイとして苦しみ人を愛することに悲観的だったTalayも、孤独な人生を歩んできたPuenも、それぞれの息苦しさから解放された時、世界はもっと透明にきらめいている。

ブルーな心と、空っぽの白紙だった心が、CRYSTAL CLEARに変わる。

そんな最終回だったのかな…なんて思いました。

 

ところで、色以外の考察…

2つの世界には、「異世界にいる人と同じ姿の人物」が複数人登場します。

挙げていくと

・Joe(Talayの友人)とPramote(Tessの友人)
・TamaGodji(本人)そっくりのTamaGuaijeng
・GunAtthaphan(本人)そっくりのThird(Khaiもいるらしい、たぶんOff似)
・TayTawan(本人)そっくりの配達員(後に俳優)
・Mohk(Talayの失恋相手)とMek(Pakornの友人)
・Up & AouとTup & Tou

これだけいるとなると、もしかしたら異世界には、誰しもそれぞれの分身である「もう一人の自分」がいるんじゃないか?と思えてきます。

しかし、異世界を旅する人が自分と瓜二つの人に出会うというエピソードは出てきません。異世界の旅人協会での噂にものぼりません。

そこで当初は、「もう一人の自分」と容姿が異なる人もいて、異世界の旅人たちが入れ替わっているのは「もう一人の自分」となんじゃないか…?と予想したのですが…

しかし、見ていると、どうも変なんですよね。

どう考えてもTalayとPakorn、PuenとTessの方が、性格が似ている…。

自分の夢に一途でまじめな性格だけど、ストイックすぎて常識外れなところがあるTalayとPakorn。華やかで裕福だけれど、どこか空虚で自暴自棄になりやすいPuenとTess

もしかして異世界の旅人は、自分の「ポートキー」となる相手の分身と入れ替わっているのでは。

最後に16歳の少年から40歳の大人に入れ替わった人が出てきますが、これも自分自身の分身だったらあり得ないけれど、ポートキーの分身だったらあり得ますね。

この解釈を取り入れて、もう一度Vice Versaを見返してみるのもいかがでしょう…

 

この辺の解釈とか、以前書いた「入れ替わっても元の人間の雰囲気や特徴を持っている説」「Talayは酔ってキスした時にすでにPuenかもと気付き始めていたのでは?説」あたりの解釈で、AO3に書いた二次創作が3本あります。

この懐かしい淋しさを

TunとTessにとっての2年間を、Tessの視点から。絶対両片想いだろこの2人、と思ってたけど最後までわからなかったので、両片想いな2人を書きました。

海の匂い

元の世界で会った時から、ちょっとだけ特別に思っていた2人。そしてTalayが感じているPuenの「匂い」。

まわりの人たち

TunやTessが、こっちの世界にいる間に大切にしていた人や関係性もあったのかも…と、Pangが入れ替わった人物とArmが入れ替わった人物の名前とキャラクターは、大幅に捏造して書いてます。

 

よければこっちも読んでみてね!

ViceVersaタイトルカラー考察EP8,9

癒しのミステリータイBL『Vice Versa』、現在BSテレ朝にて放送中!

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リアタイ当時Privetterに書いていた各話タイトルに冠された「色」の意味についての考察を、ここに加筆・修正しつつ再掲載していきます。

 

EP8. CLOUDY GRAY

CLOUDY GRAYは、「本当の姿が見えない」「本心がわからない」ことの象徴なのかな、と。
というのも、EP8最後の暗闇でのキスシーンを見て、すごくこの絵を思い出したから。

www.artpedia.asia

薄暗い中でキスするPuenとTalay

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EP8の時点では、それが単に、お互いの本当の姿を知らないままのキスという意味かと思っていたけれど、EP9最後の帽子のシーンで、さらに見方が変わってきた。

どうやらPuenの方は、Talayが絵を描いた白いアルパカの帽子を見て、その時初めてTalayが誰だかわかったよう。だけどTalayの方は…

「Tun」が「俳優のPuen」だと知らずに、まったく同じデザインの帽子を作って渡すなんてことあるだろうか?しかも愛する人に、他の人と同じデザインなんて…

Talayは実はもっと前から、TunがPuenじゃないかと思っていたのでは…

さらにMekのエピソードを通して、Talayがかつて男の子に片想いしていたことも明らかになる。Talayが恋愛に興味がないのではなく、恋愛に希望を持てないゲイという説はかなり当たっていたかも。

その辺をふまえて最初の方から見返すと、TalayがTun=Puenであることに気付くきっかけって、もしかしてキスでは?と思えてきました。

転生前に、Puenが撮影現場でTalayに接近して顔に息を吹きかけるシーンがある。
その時Talayは、ちょっとどぎまぎしたような表情をしている。

前回の考察 に書いた、魂が入れ替わっているだけじゃなく、身体的なものも含めたその人の雰囲気や匂いなども、転生前の本人のものなのでは?という説が当たっているとしたら、EP2で酔っ払ってキスした時には、記憶が曖昧ながらも〈Puenの匂い〉を感じ始めていたのでは?

あの、互いの姿が見えない〈CLOUDY GRAY〉な闇の中でのキスの時、Talayは「本当の顔を知らなくても好きだ」と言っている。

けれど実は「本当の顔」を知っていること、だからこそ自分のことなど覚えていないはずの俳優のPuenが運命の「ポートキー」の相手だと自信が持てなかったという「本心」こそ、この時〈CLOUDY GRAY〉によって隠されているものだったのでは…。

 

EP9. MIDNIGHT BLACK

そしてTalayもまた、Puenの本当の心の闇を知らない。
その闇こそが、EP9〈MIDNIGHT BLACK〉なのかな…と思う。

実は、Puenの基本カラーを白かとアタリをつける前に、「Puenの色は白と黒のモノトーンかな?」とも考えていました。タイトルカラー以外で身に着けていた色に、白黒カラーが多い気がしていて。

実はこれもある意味当たっていたのかも。

黒はPuenの心の底にある、もう一つのPuenの色なのかもしれない。

愛のない、孤独な人生を歩んできたPuenにとって、Talayは暗闇に現れた初めての人で、初めての愛。

Puenが本当の姿も知らないTalayへの恋にあまりにも躊躇なく突き進むのを、さすがに不思議に思っていたけれど、EP9で彼の背景を知ると、理解できる気がしてきました。

「言うて君がキスしたりハグしたりしてるその体は別人のものなんだぞ?そんなに好きになって大丈夫か?」とか思っていたけれど、人の温もりや愛を感じることそのものが、Puenにとって人生初の体験だったら、そりゃあもう体が誰でも関係ないと思っちゃうよね。何しろ彼の世界に現れた最初の一人なんだから。

(そういえば、EP4でのガーデンカフェでの再会の時、黒いシャツを着たPuenがあまりにも孤独そうでしょんぼりして見えたのでした…)

Puenにとっては、自分が抱える孤独な〈MIDNIGHT BLACK〉の世界をTalayに話すことが、2人の間にまだあるお互いの見えない部分──〈CLOUDY GRAY〉を晴らすために必要なことだったんだろう。

そしてTalayが帽子をプレゼントしたことも、Talay側から〈CLOUDY GRAY〉を晴らすために、勇気もって踏み出した一歩だったのでは。

だけど、互いに気付いたことをまだ話さないTalayとPuen。ここからどうなるのか…?

 

そしてちょっと遡り緑の話

EP2のタイトルカラー〈FOREST GREEN〉も、当初書いたのとは違う意味があったかも。

緑色は、その後のエピソードでも重要なシーンに頻出する。

たとえば、UpとAouの信頼を失って落ち込むPuenをTalayが慰める公園。
映画のロケ地として2人が見つけ、そして再会するガーデンカフェ。
TalayがFriend CreditsをやめるとPuenに告げる時、2人を隔てる家の門。
(印象的なところを書き出したけど、他にもかなりいっぱいあります…!)

〈FOREST GREEN〉は、「関係性」が変化する時の色なのかもしれない。相手への気持ちの変化の時だったり、ずっと抱えていた気持ちをなんらかの行動に移す時だったり。

EP2のTalayは、かなり多く緑色を身に着けている。これはTalayのPuenへ向かう心が、このエピソード中、目まぐるしく変化したことの表れだったのでは。

当初TalayはPuenが自分の「ポートキー」であることをかなり期待していた。
もしも、転生前に出会いちょっとときめきを抱いていた「あの人」かもしれない、という思いがあったなら、その期待の強さには納得がいく。(しかもPuenこいつ、起きたら上裸で一緒に寝てたりカジュアルに頬にキスしてきたり、ゲイのTalayにとってはめちゃくちゃ罪作りなやつである)

マッチングシステムでマッチした相手だと思った時の喜び、誤解だったとわかった時の落胆、なのに迷路で出会えた時の嬉しさと戸惑い。すべてのシーンに印象的な緑。

だけどこの時点のPuenは、同じような期待をTalayに対して抱いていないのが態度にも明らかだ。次第にTalayは、もしTun=Puenだとしても、彼にとって自分は覚えてもいないであろう一般人、取るに足らない存在だったことに気付き始めたんじゃないだろうか。

その後のTalayが、なかなかPuenと自分が「ポートキー」同士だと認めようとしないのも、TunがPuenじゃないかと思っているからこそ、「自分が勝手にPuenを知っているだけで、Puenにとって自分は誰でもない人物だ」という思い込みからだったのかも…

でも、帽子を見ただけでPuenは「空港で会ったあの子」のことをちゃんと思い出すんですよね。定かではないけれど、Puenにとっても元の世界でTalayとの出会いは、何がしか記憶に残るものだったのかな…。

そして、EP6で意味深だったあの、Pakornのお母さんが黄色い服のTalayと緑の服のPuenの立ち位置を入れ替えさせるシーンも、FIRE YELLOWとFOREST GREENの意味を考えると、淋しがる時間はもう終わり、ここからまた2人の関係に変化が訪れるよ!と示唆していたのかな、なんて。

タイドラマ曲日本語歌詞 23.5 OST『โลกเอียง (Tilt)』

タイ語の曲に、意訳かつ歌える日本語歌詞をつけたものを掲載しています。

 

31. 23.5 OST『โลกเอียง (Tilt)』

nekocap.com

上はNekoCapという動画に外部から字幕が付けられるサイトのリンクです。

ブラウザの拡張機能にNekoCapを入れている方は、YouTubeサイトからも見られます。

www.youtube.com

 

歌詞全文

Tilt

ああダメだ 恋に落ちたんだ
眩しすぎる瞳 いつもノックアウト
もっと近づきたい心臓が
昼も夜も叫んでるよ

どうしたらこんなんなるのなんて
胸の奥めちゃくちゃにしちゃって
気づいたらハートをギュッとつかまれた
もうブレーキはきかない

地球儀は傾き回り出す
君にただよろめく気持ちみたい
引き寄せてドキドキしてる
世界が変わるくらい恋してる

ああダメだもう 奪われた
この心君抱きしめて
もっと近くに そばに来てもっと
じりじりしちゃうから

どんなこと君したのなんて
意識すらめちゃくちゃになって
気づいたらハートをギュッとつかまれた
ね止められないみたい

この星は傾き回ってる
君にただよろめく私みたい
少しずつ手と手触れ合う
世界が変わるよな恋をしよう

NaNaNaNa Nana
NaNaNaNa Nana
Ha Ha Ha Ha

NaNaNaNa Nana
NaNaNaNa Nana
HaaHa HaaHa

ねえ 地球は傾いてるみたい
君の方へ近づいてるみたい
高鳴った鼓動重なる
この恋は世界を変えるかな?

とうとう、とうとう始まりましたよー!
GMM初のGLカップルMilkLoveの主演作、23.5!

1話からすでに、高校生のクィア・ヒューマンドラマとしては『The Shipper』『My School President』に並ぶ名作となる予感がすごい…!

主題歌も主演のMilkLoveが歌うときては、「歌える日本語歌詞」をつけずにはいられませんでした。

 

・こだわりポイント

歌い出し

อยู่ๆ ก็เผลอไปรักเธอ แบบไม่ตั้งใจ

突然、うっかり(不注意で)君に恋した そんなつもりなかったのに

のところ、最初は「突然の恋は~」みたいな感じで考えてたんですが、元詞は「うっかり」のニュアンスをかなり強調してる感じがしたので、

ああダメだ 恋に落ちたんだ

と、表現されているエッセンスを大切に、ちょっと思い切った意訳にしてみました。

 

Bメロの

どうしたらこんなんなるのなんて
胸の奥めちゃくちゃにしちゃって

としたところは、

อยากรู้เหมือนกันว่าเธอนั้นใช้วิธีแบบไหน
เธอเหมือนมาหลอมละลาย ให้ใจฉันแทบจะบ้าตาย

君がどんな方法を使ったのか知りたい
君は私の心をおかしくなるくらい溶けさせた

という感じなのですが、「おかしくなる」という部分の「บ้าตาย」は「バカになりすぎて死んじゃう!」くらいの言葉を使っているようなので、英訳のmeltのような甘い感じよりも、恋して混乱している心情を強く出してみました。

そしてサビ、

อาจเพราะว่าโลกมันเอียง มันเฉียง มันหมุนไปทางทิศเธอ
ที่ฉันนั้นเอาแต่เพ้อ แต่เพ้อ อย่างนี้ คงเป็นเพราะเธอ
ที่เข้ามาดึงดูด เข้ามาทำให้ใจเต้นรัว
แล้วฉันเป็นโลกของเธอบ้างได้ไหม ให้เราได้รักกัน

たぶん地球が君の方へ傾いて斜めに回ってるせいかもしれない
こんなふうにモヤモヤしてるのは君のせいだよ
近づいたから惹きつけられる 近づいたら鼓動が跳ねて速くなる
私は君の世界の一部になれるかな? 私たち愛し合わない?

1番では

地球儀は傾き回り出す
君にただよろめく気持ちみたい
引き寄せてドキドキしてる
世界が変わるくらい恋してる

としたんですが、一番難しかったのは最後の一行です。

単純にかなり縮めなきゃいけないというのもあったんですが、それまでの歌詞がだいぶ片想いっぽかったので、縮めた上に「愛し合わない?」というニュアンスを入れると、唐突な印象になってしまう。

それで1番の時点では片想いのニュアンスの「恋してる」にして、2番では

この星は傾き回ってる
君にただよろめく私みたい
少しずつ手と手触れ合う
世界が変わるよな恋をしよう

3行目で2人の距離が近づく要素を強くし、とうとう2人の意識が互いに向き合って「愛し合わない?」と問いかけられるような関係性に…と展開させてみました。

2番は元詞の時点でも、Aメロの歌詞がちょっと両想いっぽくなってますね。

ところで「世界が変わる」というのは「私が君の世界の一部になる」というのを短く表現する言葉として、恋をしたことで君の世界がちょっと変わる、みたいな意味を込めて作ったのですが…

女性同士の恋愛を描くドラマの主題歌であり、主演2人が歌うことやMVにもかなりガールズカップルのラブソングとしてのイメージが込められているこの曲。

自分で作った表現ですが、「世界が変わる」という言葉にもう一つの意味を込めたくなりました。そこで最後は、

この恋は世界を変えるかな?

と、MVのウェディングドレスの2人にも重なるように作ってみました。

すべての同性カップルたちには世界を変える力があるし、何の権利も欠けることのない結婚が実現する世界もきっと来る、という祈りをこめて。

ViceVersaタイトルカラー考察EP5~7

癒しのミステリータイBL『Vice Versa』、現在BSテレ朝にて放送中!

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リアタイ当時Privetterに書いていた各話タイトルに冠された「色」の意味についての考察を、ここに加筆・修正しつつ再掲載していきます。

 

EP5. WINTER WHITE

もちろん雪のシーンがこのタイトルと絡んで最も象徴的だけれど、これまでの流れを考えると、もっと何か意味がありそう。

Friend Creditsが白紙になったこととかかなーとも思ったけど、Puen自身の基本カラーが白のような気もしてきた。

Puenは元の世界であまり幸せではなかった?と思える場面がちらほら…
Talayといる時はいつも陽気なのに、P'Dolでさえ「普段は無表情」と言う。P'Pangに再会して笑顔になる前から、我々が知ってるPuenは、Talayの前でいつもヘラヘラ笑ってるPuenちゃんなのですが…w

そしてPangも、Puenが「撮影現場では冷たく難しい顔をしていた」と。

さらに、Talayには「ポートキー」が見つかったら「自分を待つな」「夢を捨てるな」と言いながら、自分自身はTalayと一緒に帰れる時を待つと言う。
Puenにとって、俳優の仕事はあまり大事な夢ではなかったのか。

白い雪に覆われるように、この世界でPuenは名前も変えて、「白紙」になりたかったのだろうか…

 

そしてTalayも…
もしあのピンク(DEEP MAGENTA)のズボンがTalayの心を表していて、EP2の最後くらいの時点ですでにTalayの方がTun(Puen)を好きになっていたとしたら…
Talayは実は「恋愛に興味がない」のではなく、Tun(Puen)への片想いを自覚して、わざと興味がないふりをしている?

その解釈で見ると、Talayは恋愛に疎いAロマンティック傾向の人物ではなく、ゲイであるゆえに恋愛に悲観的な人物のようにも見えてきた。それがTalayの、ピンクを嫌うブルーな心の背景か…?

そして、これは今のところ完全になんとなくの憶測なんだけど、もしかしてTalayはすでに、TunがPuenだとわかってて、本人が明かしてくれるのを待ってたりしないかな…?

あと、何度か見返して気付いたんだけどTalayの携帯ケースの色は青で、Tun(Puen)のは白でした。けっこうこの「2人のベースカラー」って予想は当たってる気がしてきたぞ。

 

EP6. FIRE YELLOW

服の色、背景、灯りの色など、タイトル通りイエローが多分に使われているけれど、最後のP'Joobに捧げられたキャンドルの灯火が、FIRE YELLOWの意味するところを示したと考えて良いのでは…と思っています。

PuenとTalayの恋心の新たな展開のカラーなのかと思っていたところに、この悲しい展開は、大きな衝撃でした。
まさか死者を悼むキャンドルの灯りの色だったとは……

しかしこれをふまえてこのエピソードを最初からさかのぼると、それまでに出てきたFIRE YELLOWの意味がさらに深まる気がします。

黄色い灯火は、失った人を恋い慕い、その淋しさにただ心を沈める時の色。
喪失の時に、その隙間をすぐに何かで埋めようとするのではなく、ただ淋しいと思うその気持ちを大切にすること。その色は少し、セピアにも似ている。

Frend Creditsの4人が再び集まった時、優しい黄色の灯火に包まれ、花火を空に掲げ、彼らが語るのは、どれほど互いが恋しかったか。
しかし彼らが語る恋しさ・淋しさは、復活の道へとつながっていく。その時FIRE YELLOWは、祈りの色のようにも見えてくる。

失ったものへの淋しさ、恋しさを、誤魔化さなかったからこそ、その想いは「再び出会いたい」という祈りとなる。そして祈りは、彼ら自身を変える力となる。

しかし、P'Joob追悼の後、TalayがPuenに泊ってほしいと頼んでベッドで語り合うシーン、引きのショットでは両脇に黄色い電球色のライトが灯っているのが見えるけれど、大切な話をしているところではアップになって、それらは映らない。ここで印象的な色は、青と白。

白いシーツのベッドに横たわるPuenとTalay。Puenは青いTシャツ、Talayは黒白チェックのパジャマで、全体に青みがかったトーンの画面。

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この直前のインタビューで、2人は互いに出会えたことへの感謝を語る。
両脇のライトはP'Joobの死を悼む気持ちだろうけれど、互いに対する喪失感は、もう2人にはない。
けれど、2人の関係を何と呼ぶかはまだ決められずにいるから、ただ2人の色、青と白がともにあるだけということなのかな…

そういえばPuenのカラー=白説で見ると、Friend Credits解散後の別離を経てTalayがPuenを訪ねた時、階段で2人が語るシーンでのPuenの背景の白は、まさにTalayがいないと世界が真っ白になってしまうPuenを物語っているようでした。

そして…もう一つ、何なのかはわからないけれど妙に気になるのが、キャンピングカースタジオの前で記念撮影をする時に、Pakornのお母さんが「この色の方がいい」と黄色い服のTalayと緑の服のPuenの立ち位置を入れ替えさせるシーン。

わざわざ色について言ってるからには何か意味があるのかー?と勘ぐってしまいますが、うーん、わからない…

ワゴンの前にFriend Creditsの4人が並んで写真を撮っている。撮影者はTunの両親。左端にTalay、左から2番目にPuenがいる。

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※ここは後に、グリーンの色解釈によって一定の意味を見出せました。そちらもまた後述します。

EP7. SUNSET ORANGE

前半は、タイトルカラーを画面の中に見つけるのがかなり難しかったです。

最初の方で目立ったオレンジ色は、Puenの髪を洗ってやる時のTalayのシャツ

SUNSET ORANGEなのに夕日を見に行くシーンでオレンジの夕日が全然映らないのも逆に気になります。

むしろ画面全体で多く使われている色は、ホワイトベージュブラウン
SOFT BLUSHカラーの幸せなピンクベージュではなく、かなり白の印象が強い、セピアのような色合いのベージュ。Talayが皿洗いしている時のキッチンのブラウンの壁も美しくて印象的でした。

そしてEP6のテーマカラーだった「喪失」のFIRE YELLOWも随所に。Puenが映画をドタキャンした時の、Talayのジャケットやクッションの色。キャンピングカーで旅した時のTalayのシャツ。

Talayが皿洗いしている時は濃いブラウンに見えた壁が、PuenがTalayのために料理している時は同じ場所なのにホワイトベージュに見えてカラリストの仕事すごい!ってなりますが、ホワイトベージュはPuenの基本カラーである白が変化しつつあることの表現なのかな?
何もない「白紙」の白から、誰かを想う気持ちの混ざった少し寂しいセピアなホワイトベージュへ。

7話もだいぶ終わりに差し掛かったところで、ようやくTalayや「異世界タイ人協会」の人たちの服、背景などに、オレンジが目立ち始める。

そしてラストシーンの26picturesエントランスのレンガのオレンジ。

SUNSET ORANGEは、FIRE YELLOWがより深まり、自分自身の淋しさを乗り越えて相手を思い遣る慈しみの色なのかもしれない。

しかしTalayは先に煮詰まらすぎせて、相手を思うあまり自分を犠牲にしようとし、ほとんど焦げ茶色にしてしまう。

互いの幸せを想う気持ちがひとりよがりじゃなくなった時、やっと2人の中間の色、SUNSET ORANGEにたどり着いたのかも。

 

 

しかし今回、色以上に気になったことが…
彼らの実際の姿は、TessとPakornの体。Pangも登場した時は、別人の姿をしていた。

実際に周囲に見えている姿とは異なる、〈元の世界の姿〉の役者が演じるのは、単にこの作品独自の「表現」なのだと思っていたのだけれど…

Pangがキャンピングカーに現れた時、AouとUpはその美しさに見惚れる。
もちろんこの世界での姿の「ヨガ講師の彼女」も美しかったから見惚れてもおかしくないんだけれど(ていうかあの役者さん誰!?めっちゃ可愛いんだけど誰か教えて)、シーンとして見ると、Namtan演じるPangが印象的な美しさで現れて、それにAouとUpが息を呑んだように見える。

そういえば、P'Joobや、EP2のゲストキャラSom(Milkが演じていた女性)にPuenはイケメンと評価されているのに対し、Talayはあまりそういうことを言われない。
中の人は全員ハンサムな俳優なので「設定として」しか捉えようがないけれど、実際の姿であるはずのTessとPakornだったら、むしろTessの方が映画の主演を頼まれたりする、華やかなタイプのようだった。

しかし、PakornではなくPuenその人のイメージが周囲に伝わっているのだったら、「人気俳優」という設定上、JoobやSomの反応は納得がいく。

そして、Talayの匂いのついたシャツを着たがるPuen…

目に映る姿とは別に、転生前の本人を感じさせる「何か」があって、TalayとPuenも、周りの人々も、外見は転生後の体に見えていても、姿かたち・匂いなども含めた「本人の雰囲気」を実は感じ取っているんじゃないだろうか…?

ViceVersaタイトルカラー考察EP2~4

癒しのミステリータイBL『Vice Versa』、現在BSテレ朝にて放送中!

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リアタイ当時Privetterに書いていた各話タイトルに冠された「色」の意味についての考察を、ここに加筆・修正しつつ再掲載していきます。

 

最初の数話は考察も短いので、EP2,EP3,EP4は一気にいきます。

EP2. FOREST GREEN

公園の木々、緑の迷路、服の色(このエピソードではTalayがかなり多く緑を着ている)…
緑がたくさん散りばめられているけれど、その意味するところは定かではない。
個人的には「異世界タイ人協会」の建物の前で別れてそれぞれ反対方向に歩き出すシーンの外壁のグリーンも美しくて好きです。

FOREST GREENはもしかして、Talayが新しい世界に心を開いた象徴なのもしれない?
Tun(Pakorn)が自分の「ポートキー」かもと思って追い回すTalay。
それは無意識のうちに、他者との関わりや出会いを求める積極的な行動になっている。
友達と遊ぶことよりも仕事に夢中だったTalayが、自分だけのブルーの世界から踏み出して、新しい出会いへ心を開いた時、そこに現れるTun(Puen)の姿。

※この解釈は、のちのエピソードでも意味深に使われる「グリーン」の表象を見て変わっていきましたが、そちらはまた後述します!

このエピソードでの、Tunを「きっとこの人だ」と信じたいTalayのいじらしくてキュンとくる様子が、私にとってはこのシリーズにハマる最初のきっかけでした…

 

EP3. SOFT BLUSH

SOFT BLUSHはベージュ、淡いピンク、オレンジのような感じかな(参考  画材の色名事典(ピンク系統・その11) | YS-12@co.jp

TalayもTunも両方、SOFT BLUSHカラーの服を頻繁に着ている。背景や光の色なども、多くのシーンで柔らかいSOFT BLUSHカラーに包まれている。恋とまでは呼ばない、一緒にいるとなんとなく幸せな気持ちのイメージ?

この回とEP4. DEEP MAGENTAは同じピンク系色(Talayが嫌うピンク)として互いに関連し合っているのでは。

Talayに公園で慰められる時Tun(Puen)のシャツはSOFT BLUSH色。しかし、Up、Aouに謝って修復できた後で、Talayに会う時はもうすでにワインレッドっぽい色(DEEP MAGENTA)のシャツを着ている。

この辺から、Tun(Puen)が積極的にTalayをかまい、Talayは逆にTunの行動に顔をしかめる場面が増えていく。

EP2までは、Talayの方がむしろTunが「ポートキー」であることを強く願っているような態度だったのに、関係性が逆転したかのよう(この逆転もViceVersa、逆もまた然りってことか?)

ところで…TalayがEP3オープニング明けのシーンで履いていたピンクのズボンは、DEEP MAGENTAに近い色。
Talayはピンクを嫌うと同時に「恋愛」にも拒否に近い態度を示している。ピンク色(DEEP MAGENTA)のズボンを履いていることをTun(Puen)にツッコまれて、「これはTessのだ」と誤魔化すTalay。
もしやTalayの方が先に、Tun(Puen)に密かに恋していたとか…?
そして脚本のプレゼンをした最後のシーンでも、Talayのジャケットは赤だけど…

 

EP4. DEEP MAGENTA

DEEP MAGENTAは濃いピンク、ワインレッド(参考 RV17 - コピック公式サイト

EP3の途中からSOFT BLUSH→DEEP MAGENTAになってしまったTun(Puen)は、もう濃いピンク(もしくは赤)に染まった心が止まらないように見える。

カフェを見つけて愛について話したシーンで、Tunはジャケットの下にワインレッド(DEEP MAGENTA)のインナー、Talayはジャケットの下にペールオレンジ(SOFT BLUSH)のインナー。

結婚式場では、Talayはじめ他の参列者はSOFT BLUSH色を着ている中、Tunのジャケットだけちょっとワインレッドっぽい濃い色をしている。
結婚式の柔らかく幸せなSOFT BLUSHの空気の中で、1人DEEP MAGENTAっぽくなっているTun。
ブーケを受け取った後のスピーチでも、もう心が恋でいっぱいな感じ。

そして窓ガラスに描く文字の色も濃いピンク。DEEP MAGENTAは、Tunの心がすっかり恋に染まっていることを表しているよう。

TalayはTunの思わせぶりな行動を拒絶するけれど、その後でベッドに横たわるシーンでの部屋の照明や、もう一度大学にやってきた時の服の色は今までよりも濃いピンク…。

そして最後にカフェで再会するシーンでは、Tunは黒い服だけれど、TalayはEP3で着ていたDEEP MAGENTAのズボンを再び履いている。

※この時のTunの黒い服についても、今回改めて感じたことがありますが、後述します

ViceVersaタイトルカラー考察EP1

Vice Versa、BSテレ朝放送おめでとう!

BS見れない勢ですが、これを機にTELASAで再試聴し始めることにしちゃいました。

ついでに、リアタイ当時Privetterに書いていた各話タイトルに冠された「色」の意味についての考察を、ここに加筆・修正しつつ再掲載することにしました。

youtu.be

YouTubeでも見られます!(Nekocap字幕あり)

TELASAではこちら↓

www.telasa.jp

 

というわけで今回は基本設定おさらい、OPED映像の初期考察と、EP1の考察です。

基本設定おさらい

・主人公はSea演じる〈Talay〉とJimmy演じる〈Puen〉
・2人は事故に遭ったのをきっかけに異世界の人間の体に転生してしまう。転生後の世界でTalayはTess、PuenはTun(Pakorn)という人物の体に入っている。※Tunがチューレンで、本名のファーストネームがPakorn
TessとTun(Pakorn)も入れ替わりにTalayと Puenの体に入っているらしい。
・元の世界に戻るには、自分の「ポートキー」となる相手を見つけなければならない。(つまり2人1組で元の世界に戻れる)
異世界を旅している人は普段は夢を見ないが、自分の「ポートキー」が見つかったら初めて夢を見る。その夢に見た場所へ行けば、元の世界に戻れる。
・Puenはなぜか元の世界での自分の名を明かそうとせず、この世界でTunと名乗っている(体の元の持ち主のことはPakornと呼んでいる)

 

OP、ED映像の色について

OP映像は一貫してピンクの差し色が入っている。タイトルロゴにもピンク。やはりピンクは今後も2人の関係を示す重要なカラーとなりそう。
2人にとって一番しっくりくる新たなピンク…つまり2人の恋の色が、これから見つかるのかな?


EDは海辺に座る2人の後ろ姿。この風景が「夢に見る場所」なのだろうか…?
しかし、これほど「色」がテーマとして押し出されているからには、ED映像でもやはり色が気になる。雲の白と海の淡いブルーが互いに混じり合ったような色合いは、やはりPuenとTalayのベースカラーということだろうか? 空っぽな白と孤独(個人主義)のブルーが混ざり合って、優しいパステルブルーに変わる?

 

EP1. OCEAN BLUE

面接に失敗したTalayが「今の気分はオーシャンブルーだ」とこぼすセリフが象徴的。しかしこれは、Talayという人物の基本カラーなのではないかな、と推測しています。Talay(海)のブルー。

カラリスト(映像作品の色彩担当の仕事)の夢を追っていて、“色”に並々ならぬこだわりを持つTalay。
しかし、ピンクを嫌い、友達が撮った自然の夕焼けの風景すら青みがかった色合いに変えてしまうのは、カラリストとしてちょっと偏りすぎにも思える。
夜の海のブルーに見惚れて深いところまで行ってしまったTalayは、足を取られて溺れ、目覚めた時は別世界のTessになっていた。

ミュージカル『アンドレ・デジール最後の作品』観劇レビュー

ミュージカルアンドレ・デジール最後の作品』のレビューです。

ウエンツ瑛士さんのファンなので観たのですが、同時に脚本と歌詞が高橋亜子さん、演出が鈴木裕美さんということでも、観劇前からかなりワクワク。

原作なしの日本オリジナルミュージカルで、有名なBW版や原作漫画などのネームバリューがないのは、興行的になかなか厳しそうですが、しかしこれは海外にも輸出されてほしい、日本でも何度も再演してほしい作品でした。

その中で、いくつか気になるポイントを備忘録的に綴っておきたいと思います。

 

ブロマンスか否か?

主人公の2人、エミール(ウエンツ瑛士/上川一哉)とジャン(上山竜治小柳友)の、共鳴と唯一無二の絆は、友情という言葉では表し切れないほどのものとして描かれている。その間で交わされる言葉は、恋愛において語られる言葉にも近くて、しかし、この2人を明確に恋人と示すようなセリフやエピソードはない。

こういう恋愛と友情のあわいのような男性同士の関係性を描いた作品は昨今「ブロマンス」と呼ばれたりするけれど、ブロマンス作品はクィアベイティング*ではないかという批判も巻き起こっている。

(*クィア/性的マイノリティのコミュニティへ貢献する表現ではなく、注目を集めるためだけにクィア的な表象を曖昧にほのめかすこと)

ただこの『アンドレ・デジール最後の作品』においては、むしろ、アナ雪の「エルサにガールフレンドを」or「アロマンティック/アセクシャルのプリンセスに」の論争に似たジレンマがある。

共鳴し合うことでともに一つの絵を作り出す2人の、「人生でこんなに心から求めるヤツはいない」と歌うほどの互いへの強い想い。しかし、他にはない究極に特別な関係であるからこそ、それが必ずしも「恋愛」である必要があるのか?という疑問に突き当たる。

人生で最も特別で大切な人は、恋人でなければならないのだろうか?

この2人を明確に恋人として描いてしまうと、究極の特別な関係=恋愛である、というメッセージになってしまうのだ。

しかし、2人は互いに、他の恋人やパートナーができるといった描写は一切ない。離れてからのその後の人生が語られるとき、よくあるセオリー通りなら「結婚した」か「生涯孤独だった」かどちらかの言葉で示されるが、どちらの言葉もない。そんなことはわざわざ言うようなことでもない、という風に。

その上で…観劇後しばらくしてふと、私の頭に「一緒に贋作制作をしていた数年間、2人が恋人だったとしても何もおかしくない」という考えが浮かんだ。

恋人だったとしてもこの脚本は何一つ矛盾しないし、しかし、恋人でなくてもいい。2人の関係はどちらにしろ特別なのだから。

ただ、明確に恋愛関係としてしまうと、世間が「恋愛」に抱く様々な先入観が付随してくる。身体的接触とか、性的欲求とか、嫉妬とか。それら自体「恋愛」への偏見かもしれないが、こういう要素が「一つのものを創り出すことで結びついた2人」という部分をぼやけさせるのは確かだ。

演出の鈴木裕美氏は、Twitterでこんなことを語っていた。

たしかに、他の役はともかく主役のエミールとデジールは、ジェンダーがどのように違っても、ほぼ脚本を変えることなく成り立つ。

この話を聞いてからずっと私は夢想しているのだけれど、いつか再演が叶ったら、男性ペア、女性ペア、男女ペアのトリプルキャストで演じてもらいたい。

おそらく男女ペアが最も恋愛関係として読み解かれやすいだろうけれど、唯一無二の特別な関係を明確に恋愛として描かない意義も、最も示されると思う。

 

ジャンのエミールへの愛

ウエンツエミール×上山ジャンの東京千秋楽では、ジャンは、エミールが壊れそうな精神の持ち主だとずっとちゃんとわかった上で、彼をとても大切にしているように見えた。
利用しようとする人たちに絡め取られて流されてしまう時でさえも、ジャンはむしろ、エミールを守って汚れ役を一身に引き受けているようだった。

ジャンのエミールへの愛情は本物だったと誰もが信じると思うけれど、同時にジャンはエミールの絵の一番のファンでもあったと思う。そりゃ推し画家の今までで一番すごい作品が目の前にあったら興奮するよね…。

でも、エミールは最初から「デジールの最後の絵を描いたら絶望から戻ってこられなくなるかもしれない」と言っていた。そしてジャンは「自分が舟を出して迎えに行く」と約束していた。これが2人の大切な約束で、その約束をしてくれたジャンだからこそエミールは特別に思っていたし、裏切られたと思ってしまった気持ちもわかる。

しかしそれは、エミールがひたすら「舟を待つ側」に自分を置いていたせいでもある。デジールとマルセリーナのように、互いに互いの舟となり助け合う気持ちを持つことが、エミールはジャンに対してできなかった。

しかも、「絵を描いているだけで本当に死にそうになってしまう」なんていう、エミールの常人には理解し難いところは、いくらジャンでもすぐに気づくのは難しかっただろう…。後からでも気づいただけでわりとすごいと思う。

しかしエミール自身に「ジャンの救いの舟になろう」という思いがなかったとしても、実はジャンにとってエミールの存在は、すでに救いだったんじゃないだろうか。
ジャンの背景は詳しくは描かれないけれど、おそらくエミールの父のような家族も、誰もいない孤独な人生だったのではないかと思わせる。

初めて芸術への情熱を同じ強さと深さで分かち合え、自分を必要としてくれるエミールとの出会いが、ジャンにとって救いの舟が現れた瞬間だったのかもしれない。

 

エミールの母

エミールの記憶の母が最初に登場するシーンで、「母さん」というエミールのセリフを聞いた瞬間、私は「えっ、親から子にこの言葉はちょっと気持ち悪い」と思った。

「私たち」がこの親子2人のことでなく、「私たち人間って」みたいな意味合いなのは後からわかったけど、それにしても対等に影響を与え合う関係性の枠に親が子を入れて話すのは、ちょっと違和感がある。
ジールとマルセリーナのような、互いを助けたいと思い、互いに助けられたと思える関係は、対等な者同士だから成り立つ。子どもが親の救いの舟になることはできない。

けれどエミールは、母の救いの舟になれなかったことに苦しみ続ける。精神的なヤングケアラーだったのかはわからないけれど、抱えたトラウマはそれに近いかもしれない。

エミールの母も、もともと精神的にかなり危うい人だったんじゃないだろうか。

人との関係の中で、失敗やすれ違いや悲しみがあっても、多くの人は耐えたり乗り越えたりしてそれでも生きていく。けれど、彼女は生きることができなかった。

弱さは身勝手さでもあり、母と同じ身勝手さをエミールにも感じる。しかし両者の決定的な違いは、それでもエミールは生きたという点にある。

生きて絵を描き、きっとジャンはずっとエミールの絵を見ることができただろう。ジャンのその後の人生にも、エミールはその点で一つの幸せを与えていたかもしれない。

しかし、エミールが生き続けられたのって、ジャンから与えられた愛もあったけど、父親からの愛も土台にあったように思う。

エミールの父、不法なビジネスに手を出すような人ではあるけど、それで家庭にそんなに迷惑はかけてないっぽいし、エミールを愛していることはちゃんと伝わってくる。息子への愛に関しては、逃げたり投げ出したりしていないように見える。

そう考えるとエミールの母は、そういう親から子への愛のような、土台となる愛への安心感が得られなかった人なのかもしれない。
夫から愛されていても、他の愛を求めてしまうほどに。夫からの愛を失ったと感じた数日間のことだけで、絶望に落ちてしまうほどに。

絵を描かなくなったエミールがただジャンの支えだけを頼りに生きていく姿の、閉塞的で危うい様子は想像がつくし、そうなったらエミールも母のようになっていたかもしれない。

エミールが描かないと生きられないことがわかっていたから、ジャンはエミールに「描かなくていい」と言えなかった。

でもエミールは「俺より絵が大事なんだな」とかいう、「仕事と私どっちが大事なの」と「私の体目当てなのね」の複合みたいなこと言っててまじで話すれ違いまくってるんだよなここ…もう考えれば考えるほどエミールお前ー、ジャンの気持ちをなー!てなるんだけど、まあでも結局生きたからえらい。となるから「この命の素晴らしさを」なんだな…(そうかな…?)

 

みんなが思い浮かべた「デジールの絵」は?

これ、ツイッターの感想とか見ててもあんまり見かけないんだけど、架空の画家アンドレ・デジールの絵について、「この画家のこの絵みたいなイメージ」というのがある人、ぜひ教えてほしいなあ。

私は「水の旅人と呼ばれた画家」という最初の説明の時点で、水村喜一郎さんという画家を思い出した。

水村 喜一郎 |ARTIST・ギャラリー|口と足で描く芸術家出版

ジールの画風はもうちょっと印象派っぽい感じなのかなあ、と思うので、「デジールの絵」のイメージではないかもしれないけれど。

最初は水辺の絵を多く描いているからだと思ったのだけれど、2回目の観劇以降、「名もなき人々に寄り添う」という言葉からも想起したのかもしれない、と感じた。

というのも、実は私は水村喜一郎さんご本人に会ったことがある。

もう十数年前のことだけれど、信州上田にある戦没画家・画学生の絵を集めた美術館『無言館』で独自の成人式をやっていると聞き、友達と2人で参加した。その時ゲストとして水村さんが来ていて、同じテーブルで話すことができた。

20歳の若者だった私が40近く年上の男性に、説教臭さや威圧感を感じなかったのは、当時にしても今にしても、とても珍しい体験だといえる。

おしゃべりではないけれど、静かで穏やかというよりは、風来坊っぽい野性味ある雰囲気で、知識豊富で話していて楽しかったけれど、同年代の人と話すようにフラットに話しかけてくれた。不思議な印象の人だった。

私はアンドレ・デジールのイメージとして、「絵」よりも自分が出会った「人」を思い浮かべたのかもしれない。

 

9/29〜10/1に大阪公演があります。観られるチャンスのある方はぜひ!

www.andredesir.art